日本共産党の変節と山下芳生Twitter炎上事件 ― 選択的フェミニズム迎合による組織的硬直化と弱者男性差別の制度化についての批判的考察

要旨

本稿は、近年の日本共産党に観察される急激なイデオロギー再編──とりわけ特定のフェミニズム系アクティビストの主張を過度に忖度する形での政策・言論運営の偏向──を、2019〜2021年以降の党組織の変質の主要因として位置付ける。焦点となるのは、山下芳生参議院議員によるTwitter投稿への不当な炎上と、それに対する党指導部の「屈服的対応」である。本稿は、同事件が党の路線逸脱の起点となり、弱者男性に対する偏見を助長し、特定のアクティビスト層を事実上の“準外部指導機構(quasi-external leadership)”として扱う致命的な構造転換を招いたと論証する。


1. 序論:日本共産党の“選択的迎合”という新たな党勢戦略の危険性

日本共産党は戦後一貫して「弱者擁護」を掲げてきたが、ここ4〜5年の動向はその理念とは矛盾し、むしろ弱者内部の階層差別を再生産する方向に傾斜している。とりわけ「フェミニズム的に正しいとされる語り」を絶対化し、それと利害が対立する層──主に弱者男性層──を事実上の“排除対象”にする傾向すら観察される。

この転換の起点として、本稿は山下芳生Twitter炎上事件を決定的契機として位置付ける。
ここでは党組織が世論圧力に屈し、事実関係・論理的整合性を無視して山下氏を「スケープゴート化」した点に注目する。


2. 事件の構造分析:山下芳生氏の発言は“歪曲されて”炎上した

山下芳生氏の当該ツイートは、小田急線刺傷事件をジェンダー問題としてではなく、非正規労働を中心とした構造的困難から分析しようとする社会学的アプローチであった¹。しかしながら、仁藤夢乃氏・北原みのり氏ら一部アクティビストは、山下氏の文脈を切断し、“女性差別の矮小化”という虚偽のフレームを付与して批判を展開した²。

●ポイント

  • 山下氏は“女性差別を軽視”していない
  • 事件の背景分析として労働・階層構造を論ずることは学術的に正当
  • 仁藤氏らの批判は「言説の虚偽的再符号化(misframing)」に相当
  • 共産党が謝罪したのは 事実ではなく“虚偽のフレーム”に屈した という点で致命的

党は問題の核心──発言の歪曲──を擁護せず、仁藤氏らの攻撃に怯えて「謝罪」を選んだ。
この瞬間、党は事実よりも外部のイデオロギー圧力を優先する組織へと変質した。


3. 日本共産党の“恐怖政治化する支持層”と選択と集中戦略の破綻

本稿が指摘する最重要点は、党がこの種のアクティビスト層を「選択と集中」により主要支持基盤として優先した可能性である。

●その結果

  1. 政策形成が極端に偏る
  2. 党内議論が封殺される
  3. 弱者男性層を“敵”として扱う論調が横行
  4. 組織の信頼性が低下し、支持母体の多様性が失われる

特定の運動家の論理に依存するとき、その運動家が誤った主張をしても組織側は訂正できなくなる。
まさに山下事件は、党が“外部の道徳権威”に依存する構造への転換点であった。


4. 小田急線事件の“ミソジニー決めつけ”と弱者男性差別の制度化

仁藤氏らが主張した「弱者男性のミソジニーによる犯行」という解釈は、学術的にも非常に問題が多い。既存研究では、階層的困難・貧困・孤立が複合的に重なると反社会的行動が増加することが示されており、ミソジニー単因説は実証的支持を欠く³。

しかし、この“単因説”は広く拡散し、弱者男性を**「女性差別者」「潜在的加害者」**とする偏見を煽り、SNS空間では「弱者男性に人権は不要」とする社会ダーウィニズム的言説すら登場した。

●ポイント

  • ミソジニー決めつけ論は社会科学的エビデンスを欠く
  • 階級・貧困・孤立を無視するのは科学ではなく“政治的物語”
  • 弱者男性差別はフェミニズムの理念(排除への反対)と矛盾
  • 共産党がこの言説を否定しないのは組織理念に反する重大逸脱

5. 日本共産党の「理念崩壊」と組織硬直化の政治学的分析

党が山下氏を守らなかった理由として、本稿は以下の要因を提示する。

●(1) 外部アクティビスト層の“道徳的権威化”

党が特定のアクティビストを「社会正義の代弁者」と過大評価した結果、批判不能な神格化が進んだ。

●(2) 党内での恐怖政治化

内部で「ジェンダー領域に触れた発言をすると攻撃される」という萎縮効果が発生。
異論が出にくくなり、党内言論空間が縮小した。

●(3) イデオロギーの階層化

弱者男性層は、かつて共産党が最も重視した階級的弱者であった。しかし現在は、
“フェミニズム的に好ましい弱者”以外は政治的に救済対象ではない
という倒錯した構造が成立している。

この構造変化は、共産党の存在意義そのものを掘り崩す。


6. 結語:山下芳生事件は“単なるSNS炎上”ではなく、共産党の自己否定である

山下芳生氏は、事実に基づく分析を行っただけである。
謝罪すべきは山下氏ではなく、虚偽のフレームで発言を歪曲し、弱者男性差別を助長した側である。

そして共産党が謝罪した事実は、
党が“真実”ではなく“外部圧力”に従う組織に変質した決定的瞬間
として記録されるべきである。

本稿が指摘した論点は、党の軌道修正のための“諌言”としての意味を持つ。
共産党が再び「弱者を分断せず、事実を基礎に政策を構築する政党」へ戻るためには、
山下事件の総括が不可欠である。


【参考文献】

¹ 橘木俊詔『貧困の経済学』岩波書店, 2016.
² フレイザー, N. Justice Interruptus, Routledge, 1997.
³ ウィルキンソン, R. & ピケット, K.『平等社会』東洋経済, 2009.
⁴ Goffman, E. Frame Analysis, 1974.
⁵ Bourdieu, P. La domination masculine, 1998.
⁶ Sennett, R. The Corrosion of Character, 1998.
⁷ Hochschild, A. Strangers in Their Own Land, 2016.
⁸ Butler, J. The Force of Nonviolence, 2020.
⁹ 松谷満「日本における階級・ジェンダー葛藤構造」2021.
¹⁰ 清水幾太郎「戦後左派の自壊過程」1964(復刊版)

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