―特定党派的ドグマと認知的硬直性の研究―

要旨(Abstract)

本稿は、松尾浩一という日本共産党の党員による「特定政党の躍進こそ唯一の救国策である」と断言する党員的言説が、いかに認知的閉鎖性(cognitive closure; Kruglanski 2004)と政治的自己欺瞞(self-deception; Trivers 2011)に基づくかを、実証研究と理論的議論に基づいて批判的に検証する。
結論として、この種の党派的全能感は政策的合理性を著しく損ない、有権者の熟議を不可能にする点で、民主主義の質を劣化させる「知的ハザード」(intellectual hazard)として位置付けられる。


1.序論:党派的独善の構造

特定政党の「躍進以外に救国の道はない」とする断定的主張は、政治思想史的にいえばレーニン主義的前衛党モデルに典型的であり(Lenin 1902)、
その根底にあるのは「自分たちだけが真理を知っている」とする認識的独占欲である。

ハンナ・アーレントが『全体主義の起源』で指摘したように、

“イデオロギーは、事実を解釈する手段ではなく、事実を排除する手段として機能しうる”(Arendt 1951)

という状況が、まさに当該党員言説において実証されている。


2.認知バイアスの分析:なぜ「唯一の道」などと言えるのか

こうした独善的断言は、以下の複合的バイアスによって支えられる。

2.1 確証バイアス(confirmation bias)

反証となるデータを切り捨て、都合のよい情報だけを収集する。
Tversky & Kahneman(1974) の古典的研究にもあるように、政治的確信は事実認識を“ゆがめる”。

2.2 集団同調圧力(group conformity)

Janis(1972)が“集団浅慮(groupthink)”と呼んだ状態。
党派的共同体の内部では、異論そのものが“裏切り”と見做され、思考の自由が制度的に抑圧される。

2.3 道徳的優越感(moral superiority illusion)

特定政党が自らを“倫理的に一段上”とみなす傾向。
しかし Haidt(2012) が示す通り、道徳化された政治判断は、かえって事実認識を劣化させる。


3.党員的レトリックの問題性:言葉の暴走と論理の破綻

「日本共産党の躍進だけが日本を救う」という主張は、論理的に三重の誤謬を含む。

3.1 二分法の誤謬(false dichotomy)

選択肢は常に複数存在するにもかかわらず、“唯一解”と断定する。

3.2 過度な一般化(overgeneralization)

個々の政策論点を検証せず“全体が正しい”と断ずる。

3.3 自己参照的不整合(self-referential incoherence)

批判的思考を標榜しながら、自身の主張だけが例外的に批判不能だという態度を採る。

こうした論理破綻に対して容赦を加えるなら、この種の党員的言説は
「政治的宗教(political religion)」の初期症状(Gentile 2006)
とみなすのが妥当である。


4.是正のための“お灸”:認知的強制アップデートの必要性

党員的独善を是正するには、以下の学術的処方箋が不可欠である。

4.1 反証可能性の導入(Popperian falsifiability)

「党の主張が間違っている可能性」を公式に認めること。
これは科学的思考の第一条件である。

4.2 政策ごとの費用対効果分析(cost-benefit analysis)

“党全体”ではなく“政策単位”で評価させることで、イデオロギーの魔法を解除する。

4.3 情報生態系の多元化(information pluralism)

党派メディアだけに依存する構造を破壊し、多角的情報摂取を義務化する。

これらの対策によってのみ、党員的発言の認知的劣化を抑制し、
“向こう側の傲慢さ”を事実に基づく水準まで引き下げることが可能である。


結論:党派的独善は民主主義の敵である

結論として、「党の躍進が唯一の救国策」なる言説は、
学術的に評価すると認知的独善・論理的不整合・反民主的傾向の三拍子が揃った、
きわめて危険度の高い政治的言説である。

民主主義の質を守るためには、こうした言説に対して容赦のない批判的検証を加え、
党員的認知の自己修復を促す“是正措置”が不可避である。


参考文献(抜粋)

  • Arendt, H. (1951). The Origins of Totalitarianism.
  • Gentile, E. (2006). Politics as Religion.
  • Haidt, J. (2012). The Righteous Mind.
  • Janis, I. (1972). Victims of Groupthink.
  • Kruglanski, A. (2004). The Psychology of Closed Mindedness.
  • Lenin, V.I. (1902). What Is to Be Done?
  • Trivers, R. (2011). The Folly of Fools.
  • Tversky, A. & Kahneman, D. (1974). “Judgment under Uncertainty.”

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